始まりの気持ち8
ガラッと勢いよく扉を開いた京を見て目を丸くする光子郎。
多分一番最初に額で目立っているバンドエイドが目に入ったのだろう。
「あれ?京さん?どうしたんですかその額?」
「あーいやーちょっとどじっちゃいまして。」
あははは。と笑い飛ばすと光子郎へ軽く挨拶をしてすぐにパートナーを探しだした。
「ポロモーンっ。」
「テイルモンっ」
「光子郎さんテイルモン達見ませんでしたか?」
コンピューター室の隅々を探し出した光達を横目にタケルは何が起こったのか不思議そうな顔の光子郎に問いかけた。
「え?僕が来たときには誰もいませんでしたよ?」
「「そんな・・・。」」
ここの部屋を出るとき外から鍵をかけたのだ。
出ようと思えば窓からでれるが、窓は最初から閉まっていたらしい。
ということは絶対外にでていない筈なのだ。
この部屋内にいるはずなのにいない・・・・。
「どういうこと?」
「え・・と何?もしかしてデジモン達がいなくなったんですか?」
「あ・・はい。そうなんです。それで光子郎さんに相談しようかと。」
思っていたのですけど・・・・
歯切れの悪いタケルの言葉に光子郎は思考をどんどん巡らせる。
「居たはずのテイルモンたちがいなくなった。・・・それで?残っているのはどのデジモン?」
相談しようとしたくらいだから2匹くらいは消えているのだろう。
それで今テイルモンとポロモンが消えたのだから残りは一匹くらいかな?
光子郎はそう考えていた。
「いえこれで誰もいなくなりました。」
きっぱり大輔が言った。
まるでかの名作のようだ。
「そして誰もいなくなった・・・か。ポロモーーーンっっ。」
京は諦めきれないのか未だに探しながらつぶやいている。
そんな京を横目に今一番冷静なタケルが光子郎に簡単に説明をした。
そこに動揺あらわな光と心配気な伊織と力なくイスに座った大輔が補足をする。
あらかた皆の話を聞き終えた光子郎は一言のたまった。
「そのうち帰ってきますよ。」
・・・・・・・。
そんなんでいいのか?
だが全員がそんな光子郎につめよろうとした瞬間コンピューター室の扉が開きゾクゾクと人が入ってきたのだ。
「お・・・お兄ちゃん?」
「よう光。あっ光子郎もう聞いたのか?」
「ええ。たった今聞き終えたところです。」
「一応皆で集まれば何か考えつくかなーって思ってヤマト達連れてきたけどもしかしていらなかったか?」
「いえいいんじゃないですか?たまには皆で集まって座談会めいたことをするのも。」
「いや・・座談会のために集まったんじゃねーけど。」
頭をぽりぽり掻きながら太一は連れてきたヤマトと空と丈に困った顔をみせた。
「悪いなーせっかく予定つぶしてまできてもらったのに。」
「まあ俺の予定はどうせスーパーの買い物だからいーけどな。ホントバンド休みの日でよかったぜ。」
それをサボらされたりしたらどんな目にあうやら。
「僕も塾だし。一日くらいサボっても平気さ。」
「私はお花よ。ああ帰ったら母さんが怖いわ。太一ーー覚えてらっしゃい。」
「げっ。」
デジモン達が消えてしまったらしい。
太一のその一言で皆が皆それぞれの用事を放り出して駆けつけてくれたらしい。
嬉しい事だ。
だが何か解っている風の光子郎は素知らぬ顔でパソコンを打っている。
「泉先輩っ一体何をしってるんですか?」
京がつめよる。
彼女のパワーで詰め寄られたらまず光子郎では勝ち目がないだろう。
「・・・単なる仮説です。まだ証明できない程度なものでなんとなく・・ですがそれ以外にこの事態を説明出来ないかとおもったもので。」
その内容をなかなか言ってくれない光子郎にごうをにやして太一がつめよった。
「いいからその仮説でもなんでも言ってみてくれよ光子郎。」
「えーっとですね。その・・・」
違ったら恥ずかしいんですけどぉぉと冷や汗をかきながらなんとか引き延ばそうとする。
逃げられないかなぁ?
ちらっと戸口をみるとそこには空がたっていた。
無理ですね。絶対に。
窓は三階だから落ちたら痛いどころではすまないし。
「僕の仮説では――――――――――」
しぶしぶと口を開いた光子郎。
だがその瞬間光子郎の声を遮るかのごとく、どこからともなく声が聞こえてきた。
「「「「「たっだいまぁぁぁぁ。」」」」」
・・・・・・・。
この声はもちろん皆が聞き覚えのある声。
自分の相方の声だ。
ふと気配を感じて一斉に頭上を見上げれば、
風船のようなものに一匹一匹が包まれ空中をプカプカ浮いていた。
「トコモンっ」
「ポロモンーーー心配したんだからーー。」
「テイルモンっよかった。」
「ウパモンケガとかはないですか?」
「・・・・チビモン。このバカっっ。心配させやがって。」
まるで定位置かのようにそれぞれのパートナーの元へとフワフワ浮いて近づくとそれはパチンとはじけ手の中へと相棒が落ちてくる。
どう見ても自分のパートナーデジモン。
だが、なにかが違う小さな違和感を五人は感じ首をひねった。
しばらく手の中の存在をジッと見つめる五人に訝しげに太一が「どうかしたのか?」と尋ねるころ
ようやく一番敏感な光が微かな違和感の正体をつきとめた。
「なんか色がちょっと違う気が・・・。」
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